― わたりがにと向き合う料理店 ―
大阪・泉佐野。
海とともに暮らしてきた町に、
わたりがにと向き合い続けてきた料理店があります。
それが割烹松屋です。
わたりがには、
とても繊細な蟹です。
弱く、扱いが難しく、
ほんの少しのことで
味も状態も変わってしまいます。
そのため多くの場合、
水揚げされた時点で締められ、
加工された状態で流通します。
しかし松屋では、
生きた蟹を水槽で管理し、
その日の状態を見極めながら料理をします。
毎朝、水槽の前に立ち、
一杯一杯の蟹を見ます。
今日は使えるのか。
今日は使わない方がいいのか。
その小さな判断の積み重ねが、
松屋の料理をつくってきました。
松屋の料理は、
特別な演出をするものではありません。
造りでは、
昆布の旨味と蟹の甘みを合わせ、
旨味の広がりを引き出します。
塩焼きでは、
二段階の火入れで
蟹の香りと旨味を閉じ込めます。
酒蒸しでは、
蒸気のやさしい火で
最も滑らかな味を引き出します。
泉州野菜と合わせた料理では、
海と大地の恵みを
一皿で表現します。
そして最後にお出しする
わたりがにのかに飯。
それは長い年月、
多くのお客様の思い出とともに
愛されてきた料理です。
私たちの料理は、
決して派手ではありません。
ただ、
素材と向き合い、
その一番美しい瞬間を
皿の上に表すこと。
それだけを大切にしています。
もしまだ
松屋のわたりがにを
召し上がったことがなければ、
ぜひ一度、
泉佐野へお越しください。
この蟹が
一番おいしくなる瞬間を
味わっていただきたいと思っています。
そして私たちには、
心の中で静かに刻んでいる時間があります。
あと五年。
この仕事を
どう終わらせるかではなく、
何を残せるか。
そのことを考えながら、
今も水槽の前に立っています。
残された時間の中で、
わたりがにという蟹の本当の魅力を
できる限り伝えていきたい。
それが
割烹松屋の願いです。
割烹松屋
大将・女将

