大阪・泉佐野 わたりがに  Ⅲ


大阪湾産の希少な大ぶりワタリガニを

味わえる全国で唯一の専門店に向かう。

 

「大阪泉州では祝い事やだんじり祭りには

ワタリガニは欠かせません。」

ワタリガニの塩焼きが1匹九千円とは

なかなかいい値段であるが、

希少なだけでなく、水槽での管理にも

調理にも並々ならぬ苦労があるからだ。

「ワタリガニはデリケートで環境の変化に弱いので

水温、塩分濃度、透明度など、徹底管理した

水槽に入れているのですが、それでも毎日

20匹から30匹が死んでしまいます。

しかも死んで30分くらいすると

臭くて臭くてどうしようもありません。

ですから、365日、毎日3回から5回

水槽ワタリガニをチェックしなければなりません。

死んで30分以内であれば湯がけばたべられますが、

それを過ぎると一銭の価値もない。

生や蒸したカニを、冷蔵や冷凍保存することもできないんです。

ワタリガニ料理を専門とする店がないのは

あまりに手間がかかりるし、ロスがとても多いからでしょう。

生きているものしか調理できず、〆づに調理すると

自切りして、脚がバラバラになってしまう。

それに、体に刺が多くて、裁くのがとても大変なんです。

仕事が終わってお風呂に入って手を見ると

指先が小さい穴だらけになっています。」

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