わたりがにを扱うという事3


わたりがにを扱うという事3

今回で3回目になりました。

わたりがにの会席の値段は高いですね。
「高い高すぎる。」というお声を
散々聞きました。
最近はあまり気にしなくなったのですが。

手間暇とリスクの塊なんですよ。
数年前から約2倍の値段に跳ね上がっています。
昔は年末年始に上がることはありましたが

今は年中上質なわたりがには
高いです。
わたりがにを扱うお店はそうないと思いますが
やはり高騰しています。

やらしい話ですが、わたりがには一番高い時で
500gの蟹が一匹〇万円するんです。
大きさもバラバラ、入荷したカニも
死んでる場合もあります。

私ももう35年くらいわたりがにを扱っていますが
わたりがにの良し悪しの区別をつけるには
甲羅をめくるか、包丁で蟹を閉めるときしか
わかりません。

外見だけではおおよそはわかっても
確信まではいかないんです。

水槽の中で〇万円札が泳いでる感じです。
3年前までは5千円札だったのですが。

上質なわたりがにも天気や時化の影響を
受けやすく、仕入れが本当に大変です。
水槽の蟹が無くなったので
蟹を仕入れるという風にはいきません。
ある時買う、高くても買わないと
今日も予約のお客様が待っている。

大切に水槽に生かしても、毎日10匹から20匹が
弱くなるので、死ぬ前に蒸してしまう。
その繰り返しです。

蒸した蟹の中でもお客様に提供できるのは
蒸した中野3割から4割なんです。
全く儲かりません。
誰もまねもしません。
・・・・・・・・・・・・・・。
そこが一番のリスクです。

手間がかかるのは、
昔はほぼ大阪湾産でありましたが
最近では大阪湾だけでは賄えないので
上質なわたりがにが獲れる産地のものを
自分が現地に行ったり、担当者さんに
見本を頂いたり、常に話をしながら
私が最終的に判断しています。

そのわたりがには
水槽でも1週間くらいしか生きていませんので
死んでしまうと、処分しないといけません。
身が酸化し腐敗するので臭くて使えません。
勿体ないですし、本当に辛いです。

ですから、弱くなっている蟹を見つけて
蒸してしまうようにしています。
お店が営業中でも1日6回は水槽の中の
蟹をチェックしていますので
必死です。

休みの日も最低でも3回はチェックしていますの
泊りで遊びに行くのは大変難しい仕事です。

かに料理の中に蟹の造りがあります。
お客様の来店時間を把握してちょうど
美味しい時にお出しできるようにしています。

氷でしめるのですが、冷たすぎても
蟹の身がたんぱくに感じるので
気を付けています。

蟹の塩焼きもお客様の食べるペースを見ながら
新鮮わたりがにを水槽からだし調理しますが
身詰まりの悪い蟹や、びしゃがには
全て使えません。
勿論死んだ蟹は全く使いません。

3匹つぶして全部だめという場合も
当たり前にありますので大変です。

同じわたりがにも
極上本蟹や、真蟹、新蟹 びしゃ蟹と
ランクが付いていて味や身詰まりも
違います。
特に産地で大きく変わりますので
産地によれば全く買わないこともあります。

知らない地域やはじめての産地では
絶対に買いません。
知識のない方からも買いません。
仕方なく昔は買うことはありましたが
今ではありません。

わたりがにとは手間暇がかかり
考えられないくらいのリスクがあることが
少しでもわかって頂けたら嬉しいです。
手間暇も「コスト」なんです。

価値を感じて頂ける方にご来店して頂きたい。
その価値を共有し人と人で繋がっていたい。
そして共に楽しい人生を共に送りたいと思います。

料理の金額も賛否両論あると思いますが
私も自分のお店のコースの金額では
年に数回しか行けないですし
金額だけ見ると「高い」と思うかもしれません。
でも裏側では、お客様に満足して頂くために
手間暇をかけていることが分かると
「価値観」が変わると思いますし
特別なときには選択肢の一つとして
頭に浮かぶことは確かです。

金額はこの先も上がり続けていくだろうと
考えていますが「価値」を感じて頂くために
あきらめず、正直にまじめに頑張って
行こうと思っています。

国宝級の器もありませんし
著名な掛け軸もございません。
何処かのようなおもてなしもありませんが
単にわたりがにを愛し、お互いさまの精神で
ごまかしは一切なし!最後は人と人に
共感してくださる方が
増えることを切に願いながら、
今日もワタリガニと家族と頑張って参ります。

心よりお持ちしております。  かによろし。