私どもは、泉佐野市で昭和39年、わたりがに専門店として
営業してきました。昔はとても活気のある街で、堺市に次ぐ
第2の商業都市でした。食野家という豪商がいたり、タオル業もとても盛んな
ところでした。海の幸や山の幸も豊富で、泉佐野の漁師の腕前は全国に名を轟かせたと聞いています。
しかし今では昔の話で、なくなったり、跡継ぎがなかったり、強敵相手ができ、
なかなか思うようにならないのが現状のようです。
豊かな文化とは何なんでしょうか?
自分の地域の歴史を知ったり、食文化や風習を知ったり、
地場産業を知ることがとても大切だと思います。
私達は53年間、料理屋としてこの地域でやってきましたが、
まざまざと地域の移り変わりの光と影の時代を見てきました。
料理屋としても、食文化や風習、その土地の郷土料理は大切なことだと考えています。
そんな中で私たちが最も大切だと考えていることがあります。
それは、家族のあり方すなわち、親と子の絆です。
お父さんお母さんと、最近改まってお話されたことってありますか?
ご両親が子供さんに伝えたい事、子供さんが両親から聞きたいことありませんか?
自分たちの先祖の話や、自分の「家族の物語」を是非聞いて欲しいと思います。
遠く離れたご両親に年に何回あっていますか?年に2回なら、あと両親が生きている間
何回会えますか?
そいうところを割烹松屋ではとても大切なことだと感じています。
面と向かってお話することは、ご両親も子供さんも照れるのか
なかなかそういう機会がないそうです。
そういうことを実現していただくために5年前から
「親と子の会」としていろいろな企画し実行してきました。
改まって美味しいものを食べながら、尋ねたいこと、生き様などを
お話して頂ければどんなに素晴らしいことでしょう。
あるお客様は、ワタリガニの食べ方を、孫さんに伝授されていました。
「こうやって食べるんや。ここが一番おいしいとこで、手で食べるんや。」と
長老の顔が誇らしげです。そんな和やかな雰囲気も大切です。
私たちはその上でなにかお役に立てることがないか考えてみました。
料理を通じて、発信し、空間をご用意し、続けることが地域貢献になると考えています。
そして、毎年ご家族の方が集まった時に、写真を撮り続けています。
希望者の方には、引き伸ばし送らせて頂いています。
それも何年も立ち写真がたまりますと、それぞれの家族の方に変化が見られ、
孫さんがこんなに大きくなったとか、5年前はこんなに若かったとか?
そしてみなさん大切に飾っていただけます。
そういう思い出と家族団欒の笑顔が大好きです。
地域の食材でもある渡り蟹の食文化と、みなさんの思い出と家族団欒とが
理想の家族だと思っています。
少しでも親と子の絆に貢献できればこんなに嬉しいことはありません。
そんなことを真剣にやり続けている料理屋です。
ハイポーズ わ・た・り・が・に
(泉佐野条例で、写真を撮るときはわ・た・り・が・に
とVサインで言いましょうと決まりました。)